東洋経済オンラインのハロプロ名古屋定期公演解説記事をさらに詳細分析する

9/4、東洋経済オンラインに一本のビジネス記事が載った。タイトルは「群雄割拠!ハロプロ「名古屋降臨」の衝撃度」。8/30から始まったハロプロ名古屋定期公演のビジネス側面を解説した記事だ。切り口としては、『ローカルのテレビマンが、地元のシネコン運営企業と、東京の芸能事務所と、地域の有力イベントプロモーターをWin-Winで結ぶスキームを新規に立ち上げたよ、どうです、一ビジネスマンとして気になりませんか?』というもの。ライターがちゃんと取材をしており、貴重な情報が多いので、本記事を紐解いていきたいと思う。

ただ、この筆者の竹内一晴氏、誤字脱字が多い。東洋経済オンライン編集部の文字校正が全然機能していないのが悪いのかもしれないが、あらためていただきたいところではある。

では、以下、注のない限り引用は当該記事から。

群雄割拠!ハロプロ「名古屋降臨」の衝撃度 | 映画・音楽 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準群雄割拠!ハロプロ「名古屋降臨」の衝撃度 | 映画・音楽 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

初日、盛況

『モーニング娘。'16 牧野真莉愛イベント in 名古屋 ~まりあん?LOVEりん 散歩りん?~』には地元愛知県出身のモー娘。メンバー牧野真莉愛をメインに、静岡県出身の野中未希がゲストで加わるかたちで催され、288人のファンで会場は満席となった。
ミッドランドスクエアシネマ2スクリーン8は席数298。288人で満席とはこれいかに。ほぼ満席だったという意味なのか、それとも当日は10席つぶすレイアウトにしていたのか。初日ということでこの東洋経済オンラインの他にMANTANWEBが取材に入っていたようなので、メディア向けに席を確保していたということなのかもしれない。

ハロー!プロジェクト:名古屋定期公演スタート 初日は愛知出身・牧野が出演「地元でイベントうれしい」 - MANTANWEB(まんたんウェブ)ハロー!プロジェクト:名古屋定期公演スタート 初日は愛知出身・牧野が出演「地元でイベントうれしい」 - MANTANWEB(まんたんウェブ)

ちなみにスクリーン8の座席図は以下のとおり。

スクリーン8 | ミッドランド スクエア シネマスクリーン8 | ミッドランド スクエア シネマ

キーパーソンは誰だ

ENPLEXの羽雁彰・専務取締役
去年、まだCBCテレビ(当時、編成局長)にいた
CBCの退職(2016年2月)
CBCラジオに制作部長として出向していた

キーパーソン・羽雁氏の肩書についての記述箇所を抜き出してみた。なお羽雁氏は以下でインタビューに答えている。古巣CBCの番組だからだろうか。


ENPLEXに中日本興業よりも多く出資をし、社長を務めるのは、東海地方のコンサートなどを手広く運営するプロモーターの雄、サンデーフォークプロモーションの伊神悟氏


伊神氏の姿も同じ番組内で確認できる。伊神氏はサンデーフォークプロモーションの社長でもあるが、サンデーフォークプロモーション社は

「同社は東海地方のコンサートやイベント運営でほぼ独占的な強さを持つ日本でも珍しい会社だが、クリエイティブが弱い。

だそうである。「ある業界関係者」の弁とのことだ。

松竹と一緒にミッドランドスクエアシネマを運営する中日本興業の服部徹社長
中日本興業の小塚康興行部長

映画館側のキーパーソンはこの2人。立ち上げのキッカケとなった人と、実運用の中心人物、だろうか。

親しい間柄だったアップフロントグループの瀬戸由紀男会長に話を持ち掛けた。「彼も、ちょうど名古屋の底上げをしたいと考えていたようで。ハロプロはイベント数が非常に多いのでスケジュール調整がた大変だけど、古くからの誼で快諾してくれた」と羽雁氏

UFグループ側のキーパーソンは瀬戸氏。親しい、というのは、羽雁氏がCBCラジオの制作部長だったことおよびCBCテレビの編成局長だったことを鑑みればすぐ納得できることである。CBCラジオには「今夜もうさちゃんピース」をはじめとする諸番組があったし、CBCテレビの「ゴゴスマ」には矢口真里、藤本美貴、岡井千聖が出ていたからだ。

アップフロントプロモーションの西口猛社長は「ステージがあるとファンの反応を感じながら、そこからいろいろな発想が出てくるし広がりも期待できる」という。

UFグループ側における、中日本興業の小塚氏に当たるのが、UFP西口氏になるのだろうか。ともあれ、ハロショ千夜一夜やアイドル三十六房でステージに上がることを厭わない、どころか、ノリノリでツッコミ役をこなす、話し好きな西口氏らしい発言である。そこからいろいろな実感や着想を得る、というのも、それはそれで本心なのだろうが。

ハロプロのテコ入れポイント

ハロプロは東京(秋葉原)、大阪(日本橋)、名古屋(大須)にグッズ販売などをするオフィシャルショップを展開している。売り上げは長らく東名阪の順だったが、スターダストプロモーションが名古屋地盤で運営する「チームしゃちほこ」の台頭もあってか、最近は大阪より名古屋の実績が下回りがちだったようだ。折よく愛知出身のモーニング娘。'16メンバー、牧野真莉愛の人気が上昇してきて、8月に出した写真集の売り上げも好調。彼女を中核に名古屋地区のテコ入れを図りたい事務所の思惑とも重なった。

ハロショ各店舗の売上順が判明したのは恐らくこれが初出だろう。実に貴重な情報である。

羽雁氏がCBCから独立したのが2016年2月。この時点で当然、ENPLEXのビジネスプランが大株主のサンデーフォークプロモーションと中日本興業から内々に承認を受けていただろうし、その前提として、フォーチュンエンターテイメント(BOYS AND MENの所属事務所)とUFグループの事業提携を取り付けてあったはずだ。ということはそれはどんなに早くとも2015年のことである。牧野真莉愛が本格的に「愛知県に縁あるタレント」として始動し出したのが2016年6月のCBCラジオ「まりあんLOVEりんですっ」開始タイミングで、2015年はむしろ日ハム大好きアイドルとして北海道向け / 全国区向けの売り出され方がメインだったことを鑑みると、羽雁氏がUFグループに相談した頃ちょうど牧野を中核にした名古屋テコ入れ構想が既に湧き起こっていた、などといううますぎる偶然があったとはちょっと考えにくい。むしろ逆で、2014年9月の牧野真莉愛モーニング娘。昇格時から既に、近い将来、名古屋地区テコ入れのコアに据えようという戦略があったと考えたほうがよいのではないか。デビューから2年ぐらいは、タレントとしての基礎力をかためる時間であって、下手に地方攻略の駒としてすぐ使って、急いたので事を仕損じちゃいました--というようなことがあってはいけない、という、大手の余裕の現れなのではないか。

映画館の収益スキーム、チケットシステムなどを勉強して計算したところ、「自分の給料分くらいを稼ぐためには週2回のボイメンだけでは足りない」

なお、ボイメンの起用計画のほうが先で、ハロプロへのアプローチが後だったようだ。

「同県出身メンバーによる隠れた名所散策などローカル色を出していきたい。(うちに所属する)『こぶしファクトリー』のメンバーだと和田桜子、藤井梨央が愛知出身だ」と両名の今後の出演の可能性も示唆した。

西口氏のこの発言から察するに、愛知出身メンバーの重複はべつに無駄などではないということのようだ。それは、それだけ名古屋が特に開拓しがいのあるエリアだということなのかもしれないし、もしくは、どこであっても《地域担当タレント》は複数人ずついたほうがなにかとオペレーションが容易だ、ということなのかもしれない。そんな当然といえば当然のことを、固定費をかけてしまえるのが、これもやはり大手の余裕のように思える。

今後

平日の夜は当たりの作品が出ていないと、かなり弱い時間帯。稼働率を高めていくのは必須の過大だ。

これは映画館側のテコ入れポイントだが、これがミッドランドスクエアシネマに限った話であろうはずがない。全国のシネコンが同じ問題意識を共有しているはずだ。だとすれば、今頃もう、耳ざとい興行会社からUFグループに《相談ベース》の問い合わせが何件かはいっていそうなものだ。

東阪のショップにはライブステージが設けられていて、おおむね週1回以上はファンが参加できるイベントを行っている。だが、名古屋のショップはスペースが狭いためステージがなかったのだ。

とはいえ、では名古屋の次は…?と勘繰るのは早計に過ぎるかもしれない。シネコンを利用したライブイベントの記事にハロショのステージ設備事情についての記述が出てくるということは、それだけ、イベントとの相乗効果によるグッズ売上増を重要指標として企業側が診ているからだ。その点、ハロプロは東名阪以外にショップをもっていない。ということは、当分、優先度の高い地域はなくなったのではないだろうか。当面は名古屋に集中する、ということかもしれない。それならそれで、名古屋のファンには朗報だろう。忘れた頃に第二弾がアナウンスされることを楽しみにしておこう。

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