歌詞
- 1コーラス目Bメロ「あたしのこと聖母と呼んでいいわ」という本作最強フックフレーズ。ショートサイズで披露されてもちゃんとフックになる部分を確保しておく手練の仕事。手練というか、大ベテランだが。
- 全体的に、三浦徳子御大の流石の仕事ぶりが光る。曲調が(ブギウギやロカビリーというより)カリカチュアライズされたキャバレーミュージックなので、それに合わせた意匠的な単語を多数用意しつつ、しかしそれらを剥ぎ取れば、結局は、初恋に戸惑うウブな少女の気持ちという極々オーソドックスな詞世界となっている。そしてそれが、13-4歳の《アンファン・テリブル系》新人二人のデビュー曲として、彼女らのハイスキル / フレッシュネスという二面性の写し鏡になっているという構造。この構造自体はプロデュースチームが考えた構図だろうが、それを的確に架空の世界の物語に落とし込むその手腕、もう安心感しかない。
サウンド
- スネアのチューニングが最高。最初ラジオで聞いた時はドラムは打ち込みかと思ったが、これ生だろうな。こういうところのこだわりが、《音楽事務所》UFグループの信用できるところなんだ。
ヴォーカル
- 船木2コーラス目Aメロ「自惚れ鏡に」の微かな唸り声。これディレクション受けずにナチュラルにこういう唱法選んだんだとしたら船木天才。
ヴィジュアル
- おぜちぃのアイメイク。目尻を少し吊り目気味にしたのがとてもよく似合っている。
プロデュース
- 最初と最後の立ち位置ではきっちりももちをセンターに置いている。シングルの、しかもファーストトラックである以上必然的にTVなどで披露する機会が多くなることを鑑み、知名度が一人だけ図抜けているももちを、大衆が視認しやすいセンターに置くというかたい戦術。いったん曲が始まってしまえばべつにどこに置いても構わない(どうせフォーメーションは曲中目まぐるしく変わり続けるのだから)という割り切りセオリーにもちゃんと則っている。
- やなみんは、実際問題ダンスのクォリティが低いし、群舞シーンでは他人の陰になって写っていない割合が大きい。これは明らかに振付師を含むプロデュースチームからMV撮影チームへの依頼事項だったのだろうが、それでも、船木との差があまり明白になりすぎないよう、オイシいカットをできるだけ与えようと腐心したあとが見受けられる。
ダンス
- 1コーラス目のサビ直前、お姉さんズ三人横並びでこちらを指差す時のまなかんの腰の入れ方、足の開き方。流石のカッコよさ。静止ポージングもダンスだと解っているからこそキマる。
- サビラスト「Wao!」での両手両足開きポーズ。低身長グループだからこそ似合う。
MV
- 1コーラス目Aメロ「目立ちすぎているポニーテール」で、ストレートロングヘアのやなみんに髪をわざわざ触れさせるバカバカしさ。ツッコマレビリティである。
- 大真面目な顔のクローズアップカットでペロペロキャンディーを各自に持たせるユーモアセンスがいい。
- クルマのボンネットに座ると脚が床に届かない船木。ペロペロキャンディーもそうだが、こうしたコミカルな絵面を“これは年端もいかない子どもが大人の恋愛を歌う気持ち悪い歌ではないですよ、大人っぽく聞こえるかもしれませんが、子どものこまっしゃくれ感をお気軽に楽しんでもらうためのものですよ、そう、例えば芦田愛菜ちゃんのようなね”というエクスキューズメッセージのコンテナにしているのだろう。それは、ガチ大人っぽい路線を進んでキモがられたキッズや初期ベリの失敗の轍を踏まないための予防線である…というのは考えすぎだろうか。
- 曲がサビでアップリフティングになるのと合わせて躍動し始める手持ちカメラ。その使い方がかなりこなれていると思う。結構大胆に近寄って、メンバーをダイナミックにナメているというか。
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