ハロプロ楽曲大賞2023、私的部門賞はこんなだった

ハロプロ楽曲大賞'23お疲れさまでした。投票先以外にも楽しませてもらった楽曲群はいろいろあったので、ここで僭越ながらそれらに部門賞を贈ります。まさかの1年越し記事。2024版は…2025年上半期中には仕上げたい。

ブライテストホープ:米村姫良々

フックを設ける必要があるシングル曲では、米村に見せ場を当てとけば必ずいい塩梅の滑稽味を乗せてくれる、という絶対的な信頼。“落ち着いた低音が米村の持ち味だから……だから逆張りさせちゃおうじゃん?” という発想で盛り上がったんであろうシングル選曲会議、見学したさしかない。

ベストアルバム:The 25周年

セルフライナーノーツでつんく♂がいっているとおり、コスパ最優先でお手軽ベストアルバム一作でっち上げることだってできただろうに、そうしない矜持が大事MAN。特に「ここにいるぜぇ!(23 Ver.)」「ハッピーサマーウェディング(23 Ver.)」がいい。


ベストアレンジ:オチャノママホロバイコイノバ~昭和も令和もワッチャワチャ~

メロディアスなシンセオブリが過不足なし。音数が少ないのでアレンジを味わうなら「Wake-up Call~目覚めるとき~」よりこっち。

ベストアレンジャー:大久保薫

「Wake-up Call~目覚めるとき~」で遂にハロプロ作曲にまで踏み込んだ(共作曲だが)ことを知ってから「Happy birthday to Me!」の硬質なアレンジを聴き直すと、「Happy――」は “もしこのサウンドで話題にならないなら、アレンジ以外の部分のせいじゃないですか?” という大久保薫からの忠告だった気がしてしまう。

ベストインストゥルメンタル:Swing Swing Paradise

「What is LOVE?」の獰猛さはそのまま、表面上はウェルメイドなエレクトロニックスウィングジャズに擬態。凶暴さは弥増している。

ベストイントロ:Lonely Bus

こういうフィルインなしでいきなり始まるイントロ割と好みなんよ。

ベストカバー:ここにいるぜぇ!(23 Ver.)

オリジナルも充実したヴォーカルリレーを聴かせていたが、まったく引けをとっていない。

ベストコスチューム:Happy birthday to Me!

櫻井梨央の青衣装が格別似合っている。他メンバーも、ヘアメイクのクセが強い気がするけど衣装は皆いいと思う。


ベストコライト:Wake-up Call~目覚めるとき~

オケの全部とワンコーラスの前半メロは大久保薫作で、サビ含む後半のメロは星部ショウ作だそう。この曲の要諦は休みのなさ・畳みかけだと思うので、その点では構成を作った大久保薫の功績が大きいのかなあと思いつつ、しかし一般論としてシングル曲のシングルらしさを担保するのはサビメロのキャッチーさのはずであり、とすると、そこを担ったのが星部ショウでなければシングル足り得なかったかもしれないなあ、などとも思うのだ(結論なし)。



ベストコーラス:シェケナーレ

コーラスというかガヤなんだけど、最終盤、西﨑美空 “ケセラってOK?” に掛け合いで入る “OK!” がいい。幸せになる。

ベストコラボレーション:すっぴん

佐藤優樹のサビメロに意外な演歌ノリが感じられて面白い。小片リサの歌は今後クセがかなり強くなりそうな予感がして面白い。宮本佳林のヴォーカルはもう一丁あがりで、今さら他人から影響を受ける余地などなさそうなのが面白い。歌謡メロディなのにリズムが縦ノリで面白い。総じておもしれー曲。

ベストコレオグラフ:バンビーナ・バンビーノ

手指の振付が、シンプルなんだけどバリエーションがあり、意外なくらい効果的。



ベストコレオグラファー:片桐由佳

「アイノケダモノ」をメンバーがアンジュルム史上最難関ダンスと喧伝しているのを見て、そうかなあ? と最初は思っていたのだが、見れば見るほど、これは確実にスタミナを削ってくるタイプの振付だなと分かった。

ベストコンポーザー:大石昌良

「最強の推し!」は全編に一瞬たりとも隙がない曲というわけではない。しかし強烈にカタルシスある箇所があり、そこをアレンジやリズムやアクセントを手を変え品を変えしながら繰り返し、その組み合わせで一曲を成立させている。これは作詞・作曲・編曲を独力で完結させるからこその技だと思う。そしてそれが許されるのもアニソンで売れた実績があるからなんだろう。リスペクト。

ベストジャケット:Happy birthday to Me! - 通常盤B

モンドリアン風?な絵柄がお洒落。シングルよりアルバムのジャケ向きかもしれないけど。

ベストシングル:ちょっと情緒不安定?…夏 / オチャノママホロバイコイノバ~昭和も令和もワッチャワチャ~ / シェケナーレ / ヨリドリME DREAM

クアトロA面方式は成功したと思う。なんといってもメンバー10人全員に見せ場を複数用意できた。

ベストソロヴォーカル:石栗奏美 - シェケナーレ

間奏明け、“どんどん弾む~” “~ダンスホール” のトレモロがかった歌が表拍を強調し、本来流麗なメロディラインにリズムアクセントを加えている。それがこの曲においては奏功した。

ベストタイトル:ヨリドリME DREAM

公式な読みが「ヨリドリミドリ」なのは知ってるんです。でも「ヨリドリミードリーム」と読みたいんです。

次点で「私が飛行機を嫌いな理由」。

ベストダンス:佐々木莉佳子 - アイノケダモノ

これは佐々木莉佳子の体躯と筋力ありきのような。振付師の意図を振りVのダンサーよりも表現し切れているのでは、とさえ思ってしまう。や、もちろん振りVなんか観たことないけど。

ベストディレクション:バンビーナ・バンビーノ

サビ後半の “LOVEパワー” で少ししかこぶしを回さないようにしているところが巧い。こういう歌っていて気持ちいい箇所というのは、ライヴで繰り返し歌っていくうちに往々にしてどんどん表現が過剰になっていくものだからね。それを見越した上で、レコーディング音源ではサラッと流しておくくらいにとどめておくのは実に周到。なんなら、“LOVEパワー” 直後に “ッヘイ!” という男声シャウトを入れてあるのも、“LOVEパワー” 語尾を朗々と伸ばしてしまうことのないよう、邪魔となるモノを敢えて入れてあるのだと思う。道路におけるスピードバンプのような役割。


ベストプレイ:求めよ…運命の旅人算

間奏のキーボードソロ後半、ピンポイントに掛かるディレイが効いてる。

ベストプログラミング:Happy birthday to Me!

湿気を拭き取った「そうじゃない」、かな。あくまでプログラミング、アレンジ、サウンドトリートメントの話です。

ベストプロデュース:BIG LOVE

シュガーコーティング声のメンバーばかりを集めたスマイレージ1期。あまりに同系統に偏りすぎたことを反省し、1期の声の各バリエーションたる人材を配置した2期。つんく♂総合プロデュース降板を控えて、声質よりタレント性をまず優先した3期。可憐なルックスと澄んだ声を買った4期。タレントとしての存在感に賭けた5期。それまでいなかったガラガラ声の化学反応を狙って移籍メンバーを受け入れた / アンジュルムから減りつつあった甘い声のメンバーを補充した6期。歌だけにとどまらぬ全体的な表現力に期待した7期。歌に緩急はないが代わりにレーザービームのような直線的強さの声をもつ8期。声変わり後に次世代の中軸になり得る素材かを敢えて試した9期。パンキッシュな歌い方やムーディーな歌も歌える10期。アルバム新曲制作時点で残っていたメンバーの中で恐らく上國料萌衣と川名凜が主なインスピレーション源になっていたのであろう、クリアな歌が本作では目立つ。

今でもアンジュルムのパブリックイメージの中で最大なのは「46億年LOVE」なのだろうが、あの曲に大きく色をつけていたメンバーは、もう大半がいないんだよ、メンバーが入れ替わってグループの声音が変われば、似合う曲もそりゃ変わるさ、分かってよ――。不変の思い出にいつまでも縋りつこうとするファンを優しく突き放す一作。何年か後に真価が問い直されるはず。

ベストミックス:同窓生

必要最小限の音数とリヴァーブ使いの巧さ。模範的。

ベストラップ:道重さゆみ - BRUH LOVE

メインヴォーカルさんは別にいるんだけど、さゆがラップ、歌、台詞と八面六臂の大活躍。巻き舌も上手いんだけど、そこかしこで方言が用いられているところに特に可能性を感じた。

ベストリリシスト:三浦徳子

佐藤優樹「プラスティック・ジェネレーション」が本当に遺作なのかどうかは知らないが、何にしてもこの偉大なるレジェンド作詞家が逝ったことを悼まないということはないでしょう。日本歌謡史に残る作品を何曲も遺した。故人のご冥福を心よりお祈りします。

ベストリリック:妄想だけならフリーダム

しごできで頑張れちゃう私の真の欲望(弱くて愚者でも愛されたい)を解放する妄想タイム。底なし沼なので気づくと25時半。肌荒れしちゃう、今すぐ入眠しないと。年上の俺様がいいのか、年下の王子様を欲してるのか、自分でも分かっていない私。強くてお姫、ジャンヌなシンデレラが理想だけど行動できていない私。そろそろこんな自分からは目覚めなきゃ。目覚めて行動に移るために、妄想に力を借りよう。妄想に力を借りて、夢を叶えるんだ。夢を叶えるためにまず夢を見よう。夢を見るために、よし寝るぞ、Goodnight!
(我に返るなよ、私。結局寝るんかーいなんてセルフツッコミするなよ、私。叶えるほうの夢と睡眠中に見るほうの夢とを意図的に混同してる、なんて野暮な指摘するなよ、私。)

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