まろ卒業発表に寄せて

増員改名計画発表時に、初期メンがいなくなってもグループが続くようにするための措置だとは明言してた。そのことから、自身の卒業をリアリティをもって考えているのだなということは判った。

アメリカには畏敬の念をファンに抱かせるメンがいない。それが弱み。あくまで、あやかのんの個性の隙間を埋めるための補完的採用だったため。

それでも、タケには爆発力を期待していたのだと思う。だからエースカラーの赤を与えた。だけど彼女は意外なくらい保身的で…スウィーツ脳ドラマ大好き。紗友希と違って音楽的探求心がなく、好きなアーティストはE-Girlsから広がらない。それでも、鐘が鳴り渡るような涼やかな唯一無二の声と、安定した歌唱力がある故に、干されはしなかったが。結果、赤はあやちょに還された。

結局、「その美しさで時にはファンを魅了どころか圧倒しもする」という、センターに必要とされる要素があやちょにしかない時代が続いたし、その後継足り得る莉佳子が加わったのは昨秋だった。アンジュルムの象徴であるあやちょから、新時代の女王になる莉佳子へ、戴冠の儀式を行う日はいずれ来るだろう。でも、莉佳子はまだ中学2年生だし、歌のパフォーマンスもまだまだ覚束ない。もう少し、現女王のもとで帝王学を授けられる時間が必要だ。そしてそれは、あやちょが大学を卒業するまでのあと二年間というのがちょうどいいのではないか。今春あたりはそう考えていた。

あやちょが美術好きアイドルとして貴重な存在感を発揮しているのは、それは彼女がアイドルだからであって、アイドルを辞めて単なる美術好き若手女性タレントになってしまったら価値は半減する。だからこそ、美術界で地歩を築くまでは現役アイドルでい続けなければならない。そしてそれは大学在学中だけでは無理だろう。

そうは思いつつも、しかし、大学を卒業してもなおアンジュルムに居座り続けられるのは困りものだなとも思っており。莉佳子への禅譲をいつまでも遅くして構わないというわけではないし。

ここらへんについては自分のなかでも明解な正答というのは出せなかったのだが、当座の暫定的結論として、大学卒業というのはやはり何らかのピリオドになるだろう、と考えていた。そして、その約束の日まで、まろは、あやちょを支え続けるだろうと。スマ時代の輝かしい記憶と悪夢、そして臥薪嘗胆の時期を共にした戦友として。そして、スーパーユーティリティヴォーカリストとして。

だから、スマ増員から一年で辞めるというこのタイミングについてはそれほど衝撃はなかった。それより何より、「あやかのんの卒業が同時でないこと」に驚きを禁じ得なかった。

あやちょは大丈夫なのだろうか。この先、アンジュルムがどんなメルクマールを達成しようとも、その時に彼女の傍らには、スマイレージ時代(いやさエッグ時代か)から続くThe long and winding roadを分かち合う人は誰もいないのだ。自分が辞めることが即ちそういうことであることは、まろには当然判っていたはず。べつにプライヴェートで仲がよくなど決してない彼女達にとっては逆もまた真なりで、どちらかが先に降りたら、残されたほうが茨の途だ、ということをお互い恐れるが故の牽制で、この二人はグループを続けていたようなものだったのだ。

なのにまろは一人で辞めた。この構図は、2013年のれいな卒とまったく同じである。大親友の絵里に先に辞められて、自分の辞め時を逃したさゆ。年功序列でリーダーになれるかもしれないから、どうせならその禄は獲ってやるか、という理由でとどまっていたさゆ。そうはいっても、同期のれいなとは、友人関係はなかったが同僚としては大いにウマが合い、仕事においてはそれなりに充実していた。しかしそのれいなはさゆをおいて先に辞めた。理由はひとえに、自尊心が傷つけられたこと。目の上のたんこぶだった愛ちゃんがいなくなり、ようやく自分がメインヴォーカリストとして単独センターに立てるか、と思いきや、新人の鞘師とのツインセンター扱いになった。その悔しさで、れいなは即脱退を申し出た。

まろにも、当時のれいなの状況に匹敵するような何かがあったのだろうか。かわいそうだが、まろはスマデビュー時からずっと端メンであり、「大器晩成」ではソロラインさえなくなったわけだが、それが青天の霹靂だったとまでは考えにくい。れいなにとっての愛ちゃん、であるあやちょは、ずっとまろの目の上にたんこぶとしてい続けたわけで、ぬか喜びをする機会さえまろにはなかったのだから。

そうすると、やはり昨夏のベリ活動停止発表が引き金だったのだろうか。まろのベリヲタぶりはガチだったし、熊井ちゃん崇拝(まさに崇拝!)は本気以外の何ものでもなかった。それはあやちょを茨の途に一人取り残してもいい、とまろに思わしめるほどのショックだったのだろうか。

逆のパターンも考えられる。アメリカの成長と、3期メンのポテンシャルを、あやちょが認め、エッグ~初期スマ期を駆け抜けた戦友である私がいなくてもあやちょは大丈夫だ、とまろが思ったのかもしれない。私に対するのと少なくとも同程度には、アメリカに仲間意識をもっているようだ、と。もしそうだとするなら、これはもういよいよもって、あやちょのさゆ化である。れいながいなくなって、腹を割って相談できる対等な相手は失ったものの、娘。に殉じようとする姿勢が後輩から混じり気なしの尊敬を引き出し、その尊敬が真剣さへとかたちを変え、それは自ずから成長へと連なる。その成長する姿がさゆの心に信頼を生み、後輩達をただの危なっかしい後輩でなく、同じモーニング娘。のメンバーだという想いを新たにさせる。そして、自分の使命はモーニング娘。のバトンを渡し、グループの歴史の礎となることだ、老兵はそうやって去ることが最大の喜びなのだという境地に至る。その清々しい覚悟がさゆに神々しさをもたらし、後輩達はその美しさに心打たれ、リーダーのもとで一致団結する。こんな「'14の奇跡」が、アンジュルムにも起こるだろうか?

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