勝負の年だぞ。アンジュルム。

浮上

年明けから和田彩花がハロプロリーダーに就任したアンジュルム。思えば2014年秋のスマイレージ3期加入も、佐々木莉佳子という芸能人オーラ丸出し&室田瑞希というスーパー万能研修生を充ててきたのであったし、福田花音が辞めても上國料萌衣を補充し、田村芽実が辞めても笠原桃奈を補充してまたも9人を維持し、とやってきていて、これは、いかに、2014年夏の時点で既に『スマイレージをハローの二枚看板の一にする』という強い決意があったかということと、『9人のアンジュルムの絵姿』にスタッフ達が自分らの想像以上に惚れ込んでしまったかということの証左だと思う。2014年夏から2016年冬までの二年余とは、要するにそういう時間だった。

ハロプロリーダー奪取が、その一連の座組み確立プログラムの一旦のケリつけだったのだとするならば、2017年はいよいよもって、その実力で乱世を平定していくプロセスとなろう。しかし事がそう平易に進むとは思えないというのが正直なところだ。

安全運転で暴走せよ

「大器晩成」で、改名前を通じて初のオリコン初週4万枚を突破したはよかったが、次作「七転び八起き」次々作「出すぎた杭は打たれない」では売上を連続で落とした。「次々続々」では大きく盛り返し、自身初の5万枚を突破。しかしその次の「上手く言えない」では再び落ちてしまった(「上手く言えない」の前にオリコンの計測方法変更がありはしたが)。これは要するに、楽曲の出来に売上がダイレクトに左右されているということで、音楽文化としては真っ当なことだが、ショウビズとしては不安定と評価されてしまう状況である。

アンジュルムが今年、アイドル業界で確固たる地位を獲得するためには、『上り調子であることを実証する幾つかのファクト』と『業界のキーパーソンらに興奮という主観的体験を与えたこと』の二つが両方必要である。それが揃っていればこそ、メディア人は自信をもってアンジュルムを推す。

しかし、上記したシングル売上状況ではその前者が心許ないではないか。

楽曲は基本的に授かりもので、当たるも八卦当たらぬも八卦と思うが、しかしアンジュルムの次作は、そんな悠長なことをいっていられず、ハズさないために極力作為的に作らなければならないのではないだろうか。「大器晩成」「次々続々」直系の、ハイ-アドレナリン系。それは、「大器晩成」の後だからちょっと目先を変えてクールなダンスナンバー(「七転び八起き」)にしよう、といった、ごく真っ当な音楽的バリエーション探求・遊び心の入る余地を許さない要請だ。前が180だったから、次、205ね。その次は240ぐらいだから、よろしく。インフレを重ねる楽曲方向性である。まるで一本道のマップを歩かされるRPGのようで、とても愉快なものではない。が…

だがしょうがないのだろう。正念場で、多くの人の期待に応えるという大一番を通過してこそ、利権も手に入れられる。正しいことをしたけりゃ偉くなれ、と和久さんも言ってたじゃないか(踊る大捜査線)。これがアンジュルムの臥薪嘗胆、なのかもしれない。2年遅れで自らにやって来た臥薪嘗胆ショータイム。

会場選定が発する暗黙メッセージ

『上り調子であることを実証する幾つかのファクト』はもちろんCD売上だけではなくて、コンサートの集客状況も代表的なものだ。この点でも不安要素はなくはない。田村芽実卒業以後、武道館公演を行っていないので、大バコでの客足が読めない。田村芽実がいないことのインパクトがどれほど表れるのかも判らない。情けないと思われるだろうが、注目度が高まっている今だからこそ、石橋を叩くべきだ。春のホールツアーの千秋楽で安易に武道館を追加するようなことはしないほうがいい、と思う。

また、コンサートの中身そのものも当然みられる。『ブレイク前夜って聞いたんで、アクセスのいい大バコに来てみたよ』という理由で東京のいっちょかみ業界人が武道館に来るのならば、当然、業界人同士で情報交換をするはずである。そこで、アンジュルムの過去コンサートをつぶさに観てきている業界人、即ちアイドルライターなどが、仮に「九位一体」と比較して“まあ、あれには劣りますけどね、今日のは”と言って、それを聞いたとしたら…。そんなことも、可能性としてなくはないだろう。臆病すぎるといえばそうかもしれないが、それだけ、アンジュルムにとって2017年は正念場だと思うといいたいのだ。

“なるほど、だから彼女なのか”

最後に希望のある話をしよう。コンサートのクォリティのカギを握るのは笠原桃奈だと目している(先輩らはあらかた開花してしまっているから)が、個人的に彼女はライヴパフォーマーとしての覚醒が期待できると思っている。理由は、彼女の母親が、娘へのアドバイスとして“ステージの上では世界一のナルシストでいなさい”と言ったというエピソード。至高だと思う。こんなことを刻み込まれていれば、そりゃあ凡百の12歳とは一線を画すだろうさ。こんな助言ができる32歳って何者なんだ。

あとはこれをどれだけ強く実践し続けられるかだ。振付師や演出家は、自分の職掌として、決め事を決められたとおりにクリアできるようになることを優先して要求するだろうが、チーフマネジャは防波堤になってあげてほしいと思う。笠原桃奈を、アンジュルムの欠くべからざる九のうちの一に早期に並べるために先に開花させるべきなのは、彼女の自己陶酔力だ。仮にソロパートで目をつぶって客席を見なくなっていたりしたとしても許容してあげてほしい。これはトリアージなのだから。

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