仮面ライダーは日本を代表する子ども向け特撮変身アクションヒーロー番組である。スタートしたのは1971年だが、同じ東映製作のスーパー戦隊シリーズとは異なり、開始以来ずっと続いているものではない。そんななかで、2000年に始まった「仮面ライダークウガ」以降は、シリーズは途切れることなく放送が続いており、これが俗に「平成ライダーシリーズ」と呼ばれている。放送開始時期や、映画版の製作本数、メディアミックス展開の規模などはときに変動するが、基本的に、「1年間続くレギュラーTVドラマ」という大枠は共通している(「仮面ライダーディケイド」のみ除く)。
生田衣梨奈が、というよりモーニング娘。のメンバーがもし仮面ライダーに出演するとなったら、ということを考える時に、実現の最も手前のハードルとなるのがこの「1年間続く」という点である。TVシリーズだけでもクランクインからオールアップまで12ヶ月強(放送期間が11ヶ月間だった「-エグゼイド」の場合)。その間メインキャストは多忙を極める。TVシリーズが終わった後も各種イベントや映画などがある。これをモーニング娘。の年間定常スケジュールと両立させるというのがどだい無理なのである。
というわけで、撮影期間が短期間で済む映画ならどうか、というのを考えてみたい。以下、平成ライダーの映画版にゲスト出演した女優のうち主立ったところを、タイプ別に分類して挙げる。
仮面ライダー(的なもの)に変身する
EPISODE FINAL(2002)
仮面ライダーファム - 加藤夏希MISSING ACE(2004)
仮面ライダーラルク - 三津谷葉子仮面ライダーディケイド完結編(2009)
電波人間タックル - 広瀬アリスMOVIE大戦MEGA MAX(2011)MOVIE大戦アルティメイタム(2012)
仮面ライダーなでしこ - 真野恵里菜怪人などに変身する
7人の戦鬼(2005)
ヒトツミ - 安倍麻美オールライダー対大ショッカー(2009)
大神官ビシュム - 荒井萌仮面ライダーディケイド完結編(2009)
蜂女 - 及川奈央メッセージforダブル(2010)
バット・ドーパント - かでなれおん将軍と21のコアメダル(2011)
ガラ - 酒井美紀ベル - 荻野可鈴
みんなで宇宙キターッ!(2012)
スカイダイン - 木下あゆ美悪役
PROJECT G4(2001)
深海理沙 - 小沢真珠メインキャストと心の交歓をする
パラダイス・ロスト(2003)
ミナ - 黒川芽以MISSING ACE(2004)
栗原天音 - 石田未来魔界城の王(2008)
机なつき - 岡本玲榊原とわ - 杏さゆり
さらば仮面ライダー電王(2008)
ソラ - 神田沙也加鬼ヶ島の戦艦(2009)
トキ - 南明奈ビギンズナイト(2009)
睦月安紗美 - 渋谷飛鳥派遣イマジンはNEWトラル(2010)
上原美来 - 高山侑子運命のガイアメモリ(2010)
マリア・S・クランベリー - 杉本彩MOVIE大戦アルティメイタム(2012)
大木美代子 - 足立梨花戦極バトルロワイヤル!(2013)
ランマル - 上田眞央仮面ライダー1号(2016)
立花麻由 - 岡本夏美100の眼魂とゴースト運命の瞬間(2016)
おつう - 齋藤めぐみ悪役寄り
GOD SPEED LOVE(2006)
北斗修羅 - 森下千里MOVIE大戦アルティメイタム(2012)
小牧瑠美 - 山谷花純ママポジション
仮面ライダー大戦(2014)
葵咲 - 雛形あきこトゥルー・エンディング(2017)
星朱美 - 藤本美貴キャスト当人のセールスポイントである運動能力を遺憾なく発揮する
クライマックス刑事(2008)
セーラ - セーラ・ブランチ運命のガイアメモリ(2010)
ヒート・ドーパント - 八代みなせノブナガの欲望(2010)
明智よしの - 彩也子MOVIE大戦MEGA MAX(2011)
ユニコーン・ゾディアーツ - 人見早苗みんなで宇宙キターッ!(2012)MOVIE大戦アルティメイタム(2012)
インガ・ブリンク - 原幹恵MOVIE大戦アルティメイタム(2012)
美少女仮面ポワトリン - 入来茉里平成ジェネレーションズ(2016)
ギリルバグスター - 山本千尋生田衣梨奈当人は素面でのアクションを頑張りたいと言っているので、本人の理想は原幹恵や八代みなせのようなポジションなのかもしれない。人見早苗や山本千尋は女優転身前に武術の嗜みがあるのでレベルが違う。こちらを目指すべきではないだろう。
役が変身してしまうと、後はスーツアクターのアクションになるので、本人のアクションの見せ場がなくなる。だがそれは逆にいえば、ずっと素面でアクションをし続けるほどの自信がない場合には都合がいい、ということにもなり得る。そういう意味では、花形である仮面ライダー役を貰えるに越したことはない。
ハロプロの先輩である真野恵里菜が演じた仮面ライダーなでしこはまさにそういう役だった。変身前にアクションらしいアクションはなかったので、運動能力はほとんど問われなかった。そして、初登場作「MOVIE大戦MEGA MAX」がそうであった分、再登場となった「MOVIE大戦アルティメイタム」でもそうのままというわけにはいかず、それなりの変身前アクションを披露したが、あまりキビキビしたものでなかったことは観た人ならば判っていることである。
過去の仮面ライダー役では、仮面ライダーラルクあたりが敷居が低いだろう。基本的に常にツンケンしている強気女という紋切り型のキャラクターなので、なり切るのは比較的楽なはず。
紋切り型ゆえに一本調子の演技でも許容されやすい、という役は、やはり「人ならざるもの」に多い。敵役でいえば「7人の戦鬼」のヒトツミ、「メッセージforダブル」のバット・ドーパント、「将軍と21のコアメダル」のベルなど。ベルは牧野真莉愛にやらせたいところだが(ハイテンションな不思議ちゃんというキャラクターのため)。
生田衣梨奈の、「真顔なら超美形」という特長に照らし合わせると、既存のキャラクターで最も合っているのは「さらば仮面ライダー電王」のソラではないか。死者という設定なので、台詞もほとんどない。ただ、同様にアクションも皆無である。演技の敷居の低さを取るか、特技の見せ場を貰うことを優先するか。悩ましいところである。TVシリーズ「-ドライブ」でいうところのチェイスの女版のような役が彼女用に誂えられれば、それが一番いいのだが。